ブラジル・日本人サンバダンサーの華麗な日常

ブラジルに住む日本人サンバダンサーの全く華麗ではない日々

サンドラさんとの奇妙な友情3

貧乏人の住むアパートにはお金の無い、したがって、身もふたもない言い方をすれば、学も無く教育もきちんとされていない、よって常識が通じない人も多くいることとなる。

隣人夫婦の妻の家族は近所に住んでいるので情報が入ってくるのだが、男兄弟は全員犯罪者であるらしい。

それ自体がどうこうということは無いが、彼女の手癖の悪さは一部(サンドラさんと私の間で特に)有名で、私もいろんなものを借りパクされたり、お金を騙し取られそうになったりしている。

なので、サンドラさんは彼女とは立ち話はしても、決して家に入れない。

また、203号室に30代前半とみられる父親と息子(7歳くらい)の親子が住んでいた時は、初めは感じがよかったのだがしだいに家賃を払わなくなり、ずいぶん年上のサンドラさんを手籠めにして家賃をチャラにしようと企てたり、

断られると嫌がらせに自分の部屋の床や水道管を自ら壊すという狂った行動をとり始め、

よって水漏れで家が台無しになるのを恐れたサンドラさんの手によって水道の元栓から止められるという事件が起きた。

同じ階にある他の3部屋の元栓とともに、すなわち私の部屋もろとも。

小さい息子を逆手にとって、追い出せない状況で、水の一切使えない各部屋からは当然悪臭が漂い、私もそれにとばっちりを受ける形となり、40℃以上が続く真夏にノーシャワーなパンクな日々を経験することになる。

水を借りにいく友達の家々で、蛇口をひねって水が出るたびに感動を表すためにしていたヘレンケラーのものマネが板についてきたころ、

3か月ほど籠城した後でその親子はやっと出て行った。

細かく描写すると非常に汚い話になるのでここでは語らないが、

水が使えないというのは今皆さんが想像する50倍くらい辛いことなので、今後私に会う人はそのときの私を思い出して優しくしてやって欲しい。

そして、その父親の気持ちはまったく理解不能だが、そんな父親と一緒に生きなければならないその子のこれからの人生が幸福であるように祈りたい。

 

他にもひどいウソつきで暴力的な家族が住んでおりしかも家賃を何か月も滞納されて出て行かなかった際は、

禁断の奥の手として近くの山に行きマフィアにお金を渡し、銃を持って脅しに来てもらったそうな。

震えあがりころげるように家を出て行ったままその家族は二度と戻ることは無く、

荷物は後日親戚が引き取りに来たそうな。

この手だけは使いたくなかったんだけどね、、、とサンドラさんはため息をついた。

確かになかなかエグイ手を使いますね。とは思うが、

女ひとりだととにかくなめられるので、ここの現実ではそういう手を使わなければいけない時もあるのだ。

大家さんとして生きていくのだって大変なのである。

だがサンドラさんは厳しさの反面、201号に住む真面目に働く男性が泥棒に遭って身ぐるみはがされた際には、

お金ができるまで家賃の支払いを数か月待ってあげる、などという人情派の面もある。

私も家賃を払うのを忘れて何日か過ぎてしまったこともあるが文句も言わず待ってくれたし、

他のことでもずいぶんと助けてもらった。

ちなみにこのアパートはリオの悪名高い某有名なファベーラ(貧民街)から徒歩5分という好(?)立地ではあるが、

基本的に住宅街であり、リオの中心街まで半時間、駅やバス停へも5~10分程度で住みやすい足立区的な場所で、

たとえときどきピンク色のとかげ的なものと共同生活を送らなければならないとしても、

ワンルーム4畳半にシャワーとトイレがついて280レアル(1レアル30円計算で8600円2016年2月現在)という格安物件なのだ。

(6年前に借り始めた時は180レアルで、それからどんどん値上がりしていったのだが、ここのところのレアル安で日本円に換算するとまた1万円を切ってしまった。レアルで給料を貰う身としては関係ないのだが)

たとえたまに銃声が聞こえてきたとしても、近所の野良犬や野良ヤギに追いかけられようとも、すぐ前の道で半裸の少年が馬を駆けていようとも、隣人に金を盗まれた疑惑があるとしても、真夏に水道が2年連続3か月使えなくなっても、近所で薬(ヤク)の売人の疑惑をかけられてパトカーに追いかけられたとしても、(全部事実)

私は、ここに住み続ける。(とりあえず)