ブラジル・日本人サンバダンサーの華麗な日常

ブラジルに住む日本人サンバダンサーの全く華麗ではない日々

いろんな部屋・サンパウロ

サンパウロでハウスシェアをするために私が見に行った部屋たちを一部、ご紹介しよう。

 

駅から500mの家の部屋

二つのラインが通っている便の良い、狙っていた駅から500mほどの場所にあり新しくて綺麗そうな家に現在女子二人で住んでいるといううたい文句に惹かれ、早速連絡をして部屋を見に行った。

ところでブラジルには坂が多い。

そんなブラジルでもあまり見たことがないほど、8年住んでいる私が山とか崖以外の、普通の舗装された道路の中ブラジルで出会った一番の急傾斜沿いにその家はあった。

確かに駅からは500m程かもしれないが、これは過酷すぎる。

人間の平衡感覚に支障をきたしそうなその景色にくらくらし、約束を破って引き返そうかと思うほどだったが、

せっかくここまで来たのだからとぜいぜいと坂を下りながら家を訪ねる。

一応ね、見るだけ。

心は斜め坂のせいでかなり萎えていたのだが、対応してくれた大家の女子は明るく爽やかで聡明そうで大変好感を持った。

さっさと坂のことは忘れ、

きっと私たちいいお友達になれるわねケイティ!!

と心の中でつぶやき、

早くもパジャマで女子トークをするシーンを想像し愉しんだ。

家も広く新しく清潔で、バス・トイレも二つあるので渋滞しなそうだし何よりケイティたちとの観たことはないけどsex and the cityのような日々が私を待っている。

上機嫌でまた連絡するね!と家を後にしたが、そう、帰りには現実が、夢のような日々への妄想をぶち壊す地獄の上り坂が私を待っていた。

この私が、毎日この坂を上って仕事や遊びに機嫌よく出かけられるだろうか?と問いつつ心は千々に乱れた。

坂以外の部分はかなり気に入ったため、期限までに他にいいところがなかったらここに住もうと決めて、駅までの地獄坂を上った。

 

46歳の女性が住む家の部屋

これは広告を見たときに40代の女性がひとり住んでいて一緒に住む女子を募集中と備考欄にあり、

駅からはちと遠いが広くて綺麗そうな部屋だったので連絡を取ることにした。

こちらではwhat‘sappという日本のラインのようなスマホのアプリがよく使われていて、そこではほとんどのブラジル人がプロフィールに自分の写真を載せている。

彼女の番号を登録してwhat‘sappでメッセージを送ろうとしたところ、表示された小さく丸で囲われた写真のお姿に違和感があった。

拡大して見てみると、

 

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そう、そこにはどう考えても女装して一生懸命に胸の谷間を寄せているおじさんが写っていた。

ちょっと興味は沸いたが、一緒にふたりで暮らすとなると、写真の彼女がちょっと攻撃的な感じに見えたのと、

何か特筆するのは義務ではない備考欄にわざわざ女性一人が住んでいると書き込むメンタリティに相容れないものを感じたので、連絡するのをやめた。

 

あいつが見ている部屋

 

仕事場から歩いて30秒という奇跡の立地

スーパーの隣でとても便の良いところにあり値段も安めだった。

2階建ての家のドアをあけると大家で職業バンドマンだというおじさんが迎えてくれた。

夫婦やら女子ひとりやら4,5人で住んでいて、住人同士の交流もあるという。

私が借りる予定の入口からすぐの部屋の中もまずまずの広さだった。

だが、あいつがいる。

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私の借りる部屋の前であいつがいつもこっちを見ている。

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朝仕事に出かけるときも夜中にトイレに行くときも、おはようからおやすみまで暮らしを見つめられてしまう。

この生首は何のつもりなのかとやんわりと質問すると、これはアートであるとバンドマン鼻の穴を膨らませて自信満々に訴えてくる。

こんな、変なキノコでも食べないと発想できないような装飾センスを持つ大家の部屋に住むのは一体どうなのか。

住むことになったら一応あいつだけはどかしてもらうようになんとか説得し、俺のハイセンスな感覚がわからないなんて、とぼやかれながらもしぶしぶ同意させたのだが、すれ違った住人たちの目がことごとく死んでいたのと、値段を確認するとサイトに表示していた価格より2割増しでふっかけてきたので信用できなくなり、やめた。

 

そのほかも他の住人達が必ず私の部屋を通路にしないと出入りのできない部屋、見に行ったら誰かと相部屋だったり、また例の監獄的女中部屋だったケース、友達を呼んだりできない部屋、広告に偽りアリの値段詐称部屋など数々の部屋を見に行った。

びっくりするくらい条件のひどい部屋でも不景気のせいかかなり高額で募集をかけている。

毎日毎日一時間おきくらいに部屋探しのサイトを見ていたが同じ広告がぐるぐる回っているだけで新しく希望に沿う物件には出会えない。

この日までに出て行ってほしいと言われた期限の日までもう2週間を切ったというのに住みたい家が見つからず、

クリスマスなのに恋人にプレゼントを買うお金がないカップルばりに悲しい気持ちになり、私の心は窓の外にいた猫のその瞳のように灰色に曇っていた。(自慢の金時計と髪を売ってお互いトンチンカンなプレゼントをし合い愛を確かめ合う外国の寓話より)