ブラジル・日本人サンバダンサーの華麗な日常

ブラジルに住む日本人サンバダンサーの全く華麗ではない日々

ゲイ男子たちとの暮らしinブラジル3~第一回家を出て行く会議~

今住んでいるシェアハウスからの退去勧告を大家のレオの家族にされて、すぐさまセバスチャンとレオにその旨を告げた。

レオと話をするも、お母さんから最近連絡を受けたことは無く、「僕もなぜそんなことになっているのかわからないが、うちのお母さんは悪い人ではないのだけどちょっとそういうアレなところがある、とにかく話をしてみるので待ってくれ」、というのでその連絡を待った。

いくら母が少しアレ、と言ってもさすがに家族なので、私の言い分は聞いてもらえないのではないかと心配したが、レオはわたしの言い分も聞き入れてくれ、結局、

「話をしたらお母さんも理解してくれたので何も心配は無く、君たちは出て行く必要はない」

と告げられた。

一応解決の兆し、ではあるが、いろいろひっかかる。なんか不穏だ。

さらにレオに会って詳しく話をすると、お母さんは何十年も前にレオのお父さんと別れたが紙の上では別れておらず、お父さんが存命の頃は訪ねてくることもなければ病気になったお父さんの世話を何一つしなかったくせに、いざ亡くなったとなったら急にこの家の権利を主張し始めたという。レオのお父さんはとても優しい人で、レオは大好きだったのでずっと一緒に住んで病気の時も自分だけで面倒を見ていたらしい。

どこまでが真実なのか私には知る術は無いが、それが本当ならしょっぱい話だ。

おまけに失業してお金が無いとあんなに主張していたお姉さんはそのすぐ後からヨーロッパに1か月ほどバカンスに行っているという。

本当にお金が無くて貧乏で困っている人が1か月も遊びで旅行に行くだろうか。

レオからいろいろ聞いたところでも、彼女たちの主張していた内容とレオの述べる話があまりにも違い過ぎるので、彼女たちが取り立てて今すぐにお金が無くて貧乏だ、というのは嘘だろうと結論づける。

住むところが無いと主張していたが、他にも2,3軒ほどレオのお父さんから貰ったアパートを所有しているらしい。

ブラジル人特有の口八丁手八丁で有ること無いことを言って強引に自分の目的を達成しようとしたのだろう。

しかしなぜ急に住人を追い出そうとしてそしてなぜ急に沈静化するのか、レオと話をしてもその目的がいまいちよくわからなかった。

だが、何が嘘か本当かは置いておくとして、敵は常識の通じる相手では無い事だけは良くわかった。

一応解決したとレオは言うが、このままここに住んでいてもまたいつアレなあのクレイジーマミーが突然現れるか心配で、それから数日間はずっと誰か人が訪ねてくる気配に怯えて過ごしていた。

 

セバスチャンと話し合った結果、その剣幕で訪ねて来たのは尋常ではないし、すぐに問題が解決したというのは疑わしいので我々は引っ越し先を探したほうが良いのではないか、という話になる。

セバスチャンは私より1年ほど前からこの家に住んでいるので、私よりもずいぶん情報通だ。

今まで聞いていなかったこの家についての詳細な話を彼から聞くことになる。

もともとは大家のレオのお父さんと二人で住んでいた家で、1年前にお父さんが亡くなった頃にセバはこの家に移り住んだこと。

レオは家の管理能力が著しく低く、最初は人が住めるようなところで無くて、ゴミ屋敷のような家をセバがほとんど片づけたこと。

レオは浪費家であり、今の仕事でそんなに稼ぎはないので、私たちの家賃で自分の生活をなんとかやりくりしていること。

レオは生まれ育ったこの家に愛着があるが、レオの家族は以前からこの家を売りに出したいと思っているらしいということ、など。

 

セバスチャンの言い分はこうだ。

「僕たちは家も綺麗に使っているし支払いだってちゃんとしてる。こんなにいい借り手はブラジル人ではそういないと思うよ。いままで何人か住んでもお金を払わなかったりレオとうまくいかず出て行ったんだ。最近のレオの態度には尊敬も感じられないしトラブルも多い。しかもその家族もいたのじゃ、レオは大丈夫って言ってても絶対この先もっと重大なトラブルに発展する日が来ると思う、だから他の家を探したほうがいい。」

さすが私のセバスチャン、聡明で賢い。(その上、愛らしくかわいい♡)

 

私は、はじめはとても感じが良いレオに好感を持っていた。

私が住み始めた1年前のほんの2~3か月くらいの間レオと生活を共にしただけだが、優しく接してくれたし、ちょっとおポンコツ様であそばせることには気づきつつも、出て行きたいと思うほどに不満を感じたことは無かった。

レオはその後、他の街に部屋を借り、ほとんどこの家に帰って来なくなったので、セバスチャンとふたり快適な日々を過ごしていたのだ。

だが、レオの大家としての管理能力の無さは日々感じていた。

家賃に含まれているインターネットが何度か止められたり、さらには家の電気が止められたこともあった。

全部彼が支払いをしていなかったためだ。

電気なんて、いくらブラジルといえども、数か月は支払いをためないと止められることは無い。

さらにレオは月に1、2度、いきなり戻ってきては鍵を持って来ていないから今すぐ帰って鍵を開けて欲しい、などと連絡してくる。

なぜ自分の家に帰ってくるのにいつも鍵を持って来ないのか。

共同のリビングを一体どうしてこんなに散らかせるのかと思うくらい散らかし放題で回した洗濯物を洗濯機に放置してはまたあっちに行ったきり何週間か帰って来ない。

その家の散らかし方も、生ゴミをありえないような普段使わない場所に捨て置いて虫が湧いていたり、必要の無いものを物置から引っ張り出しては家中のいろんな場所に置きざりにしてあったりと謎な行動ばかりであった。

共同の場所に置いているものは人のものであっても何でも使い、無断で持って行ってしまう。果てはトイレットペーパーまで。

私とセバの留守の間に勝手に冷蔵庫を漁り飲み食い散らかす、または私たちの食料を勝手にちょっとだけ手をつけては封を開けたままテーブルの上に放置して腐り果てさせるそのやり口もどうにも猟奇的で、こいつちょっとヤベー奴だな、というのはひしひしと感じてきていた。

母もアレなら息子もアレだ。

いくら自分の家だとはいえ、彼のやっていることは同居人に尊敬を感じられず傍若無人で、彼が帰って来ると家が嵐の後のように荒れ果てるので、そのたびに私たちのストレスは溜まっていく。

私たちの快適な暮らしのためにはレオが散らかしたもの全部を放っておくわけにもいかず、結局そのフォローは全部私とセバスチャンがしなければならなかった。

 レオは悪気は無いようだし、一緒にいて話をしている分には人懐っこくて良いやつなので残念だが、しだいに私たちはレオがなるべく家に帰って来ないことを願い暮らすようになった。

 

 と、そんないきさつもあり、せっかく私が紆余曲折を経て手に入れた安住の地ではあっても、確かにこの家を出たほうがいいのか、、、と心は揺れた。

 だが、せっかく仲良く暮らしているセバスチャンたちとも別れがたく、ためらっていた。

セバはメキシコ人の友人のゲイのカップルの家のひと部屋が空いているのでそこへ行くこともできるが、僕たちは気が合うし、こんなに信用できる同居人を他に探すのは難しいと思うので、一緒に部屋を探して一緒に移り住もう、ということになった。

 私はセバスチャンと引き続き住めることが嬉しかったので一も二も無く快諾し、この家を出て行く方向性を持って、この会議は終結した。