ブラジル・日本人サンバダンサーの華麗な日常

ブラジルに住む日本人サンバダンサーの全く華麗ではない日々

サンパウロのお引っ越し2018さらば、ゲイ男子との暮らし(1)

また数か月も更新を怠ってしまった。

カーニバルが終わりやっと最近落ち着いてきたところで、いろいろ書くことがたまっているのだが、カーニバルから一ヶ月近く経とうというのにまだ頭がアッチに行ったきり完全に戻って来れていない感じだ。

だが戻ってきたら最後、怒涛のようにブログを更新してやろうと思っている。

全く自分でも0か100かの偏った人間だと思う。

ブラジルではそういう場合、8か80か、という表現をすると最近聞いた。

なんだよ、その中途半端な数字は。

その間の72という数に一体どういう意味が込められているのか道行くブラジル人をつかまえては膝を突き合わせ問い詰めたいところだが、生憎当方そんなには暇ではないのでそこまではしない。

そしてカーニバル前はマクンバとか除霊とかの怪しい話ばかりが続き、うっかり高い木に登ったまま降りられなくなって枝先で震えるおバカな子猫ちゃんのように、いよいよ私が戻って来れなくなっているんじゃないかと心配してレスキューの出動準備をしてくれていた友人たちに向け、普通のことも書いてまだ私はギリギリ大丈夫だということを知らしめたい所存だ。

なので、サンパウロの新しい家へ引っ越しをしてからもう2カ月以上経っているのだが、今回はなぜ一年半で前の家から引っ越したのかの経緯(おもに愚痴)を発表させていただきたいと思う。

以前からこのブログでも十分すぎるほどに引っ越しへの布石は打ってきた。

joe.hatenadiary.com

詳しく知りたい方はこのゲイ男子との暮らしシリーズを熟読していただきたいが、今回はさらにその後の詳細を付け加えさせていただこう。

 

同居人のセバスチャンが出て行き、その前にセバスチャンの彼氏も出て行ってしまったので、とうとう私はひとりきりになってしまった。

のなら広い家に一人暮らしをできているようなものなのでまだいいのだが、大家の息子レオがたまにひょっこり帰って来ては家を荒らす。

そして予想はしていたが、セバスチャンからの実入りが無くなったため、まずは早速家のWi-Fiが止められた。

そしてお金が無いからWi-Fi代は君が払ってくれないと困る、と言ってくる(Wi-Fi代は家賃に含まれていた筈だった)。

パソコンが使えないと生徒さんたちへの連絡などの仕事にも支障をきたすので、仕方なしにその分を振り込んでも、レオが支払うのが遅れて1週間~10日くらいパソコンが使えないという非常に不便な暮らしを強いられる。(それは私が引っ越すまでさらに2度繰りかえされた。)

そして、次はガスが止められた。(もともとガス・電気・水道も家賃に込みの契約だった)

シャワーも浴びられず、料理もできない。

春先になってもまだ朝晩は肌寒い日の続くサンパウロで普段物置と化していたトイレ(超狭い)に辛うじてついていたかぼそい水圧のシャワーが電気製だったことを思い出すまでの数日間は冷水でシャワーを浴び過ごす。

あまりにも不便なので文句を言うと、1カ月ほどしてやっと正規のシャワーをガスから電気式に換える工事が行われ(私がわざわざ時間を作り、2度ほどすっぽかされたのちに、立ち会った)、簡易式のコンロとガスボンベが設置された。

シャワーはガスよりも水の出が悪く電気が通らない部分冷水が混じり使い心地はツーランクダウン、さらには簡易式のコンロはお湯も十分に沸かせない代物で、

「ここはキャンプ場か!あえての、都会の不便な生活体験で初心に帰ろう、か!!」

と使うたびいちいちツッコんでしまうほど火力が弱く、インスタントラーメンさえまともに作れはしない。

 料理に関しては非常に気の利く友人がホットプレートをこれ使いなよと持って来てくれたので、電子レンジとの合わせ技でなんとかしのいだのだ。

さらに設置されたガスボンベを見たその友人に

「うわー!これはダメだよ!危ないし、マンションにはガスボンベ置いちゃいけないことになってるから、見つかったら即罰金だよ?!」

と、指摘される。

爆発する恐れがあるガスボンベを使ってはいけないのは少なくともサンパウロの都会にあるマンションでは常識らしかった。

私に言われても知らんがな、とは思ったが、いくらポンコツレオだってさすがにそれがダメなことくらいはわかっているだろうし、最近は、自分が支払っていないのが悪い癖に公共料金などの滞納の郵便が届きそれをメッセージで伝えるたび半ギレでヒステリックな文面が返ってきたりするので、きゃつに何かを言ったところでいまさら無駄無駄無駄というものだろう。

私のリオのおんぼろアパートでは全部屋一撃で爆発必死のでっかいガスボンベを大家サンドラさんご推薦の元に住み始めた瞬間から愛用していたため、ガスボンベを使うのは私にとって自然なことであり特に疑問に感じていなかった。

それにいくら不便と言っても、リオの家での不便な生活の上に水道が止められた経験すらある私には、現代の日本人が特にする必要の無い苦労に親しんでいるため他では使い道のあまり無い驚異の適応能力が既に備わっており、友人たちに愚痴を聞いてもらいながらも生活を楽しみ“電子レンジで簡単美味しいレシピ”などに挑戦する余裕すら持ち合わせていた。

だがここで本当にレオに見切りをつけた、私が日本に一時帰国の際レオにお金を払うので香水を買ってきてくれと頼まれていた時の話をぜひ聞いて欲しい。

ブラジルから日本へ行く時に空港のデューティーフリーでこの品物で良いかと写真を撮り値段を確認しOKとの返事をもらったので、ブラジルへ戻る時に寄ったデューティーフリーでその香水を買って帰った。

だがいざ品物を渡しお金を請求しようとすると、思ったより高いのでいらない、とキレ気味に断られたのだ。

なんだよそれ。

私は写真も送って値段も確認したでしょう?と抗議するも、お金が一銭も無い、どうしてこんな高いのを買ってきたんだ?こんな値段ではブラジルで買ったほうが安いくらいだ!!と見事な逆ギレをお見舞いしてくれた。

なんで欲しくもない男性用の香水を手間賃も取らずわざわざ買ってきてやったのに怒られて100ドル以上も私が被らないといけないのだ。

以前からの勝手で尊敬の念の感じられない態度に加えてその香水事件が決定打となり、私の中のレオへの信頼ははっきりと地に落ちきった。

 しかも、そんな状態だというのに、私の食器や鍋まで黙って自分の現住居に持って行って返さない、私の秘蔵のマルちゃん正麺を私専用の食料ボックスをひっかき回し勝手に食べた(本当に憎い)挙句、君は今ほとんどひとりで住んでいるのだから家賃をさらに200レアル程値上げする(ガスもWi-Fiも使えないのに)、と、どのイカレポンチ(レオだが)がぬけぬけと言い出すのかという始末で、これでもかという怒涛の理不尽な攻撃ラッシュでますます私の脳髄を煮たたせにかかってくる。

そんな時さらに、マンションの組合の人が家を訪ねてきた。

『もう3か月以上も管理費を払ってもらっていない。レオと連絡が取れないのであなたからもレオに連絡を寄越すよう言ってくれないか』

私がその旨レオに伝えたその後日、組合の人が言うには事もあろうに、

『レオと連絡が取れたが、あなたが家賃を払っていないせいで管理費が払えない、と言っているので払って欲しい』

こんな状況にもかかわらず律儀に 家賃はきっちり期日までに払い続けていたのでふざけんな、と頭に来てまたレオに連絡を取ろうと試みるも、自分の都合の悪い時には何日も連絡は来ず、くそ面倒くさいのを押してわざわざ彼氏のファビオにまで何度も連絡をしてみても返事が途絶え、ついにファビオにすら連絡も取れなくなってしまった。

 

もうさすがに耐え切れず、出来る限り速やかにこの家を出ようと決心した。

入居時に支払った、退去時に帰ってくる約束の保証金も、前払いしている1カ月分の家賃も戻ってくることは無いだろうが、もうそんなこと言ってたらキリがない。

セバスチャンがかつて、

絶対この先もっと重大なトラブルに発展する日が来ると思う、だから他の家を探したほうがいい。

と予言した通り、このままいたらもっとひどいことが起こる予感でドキがムネムネしてくる。

重い腰を上げて本腰を入れて腰に梓の弓を張り(最後適当)、他のアパートを探し始めるも、なかなか良い物件に巡り合えないままずるずると時間ばかり経っていってしまった。

一刻も早く天功のイリュージョンばりにこの家からの華麗なる大脱出を成功させなければと思う傍ら、考えるにつれなんで家賃に含まれているWi-Fiを止められガスも使えないうえ家賃不払いの濡れ衣を着せられたあげく1カ月以上分の家賃を余計に払って私が逃げるように去らなけらばいけないのか、とムカのムネムネも止まらない。

どうにも納得がいかない。私だって決してお金持ちじゃないのだし、やはりきっちり正規に前払い金分も消化してからこの家を出ようじゃないか。

私の最も苦手とするところだが、ここはもう、口八丁手八丁でブラジル名物の(?)駆け引き、というやつをするより他に手はない。

 目には目を。歯には歯を。駆け引きには駆け引きを。

ブラジル人は物事を円滑に回すため、それはもう息をするように嘘をつく。(と、少なくとも私は感じることが多々ある。)

 それにまつわり、ブラジルに来た当初から何度もブラジル人はもとよりが長くこちらに住む日本人や日系人の友人などと噛み合わうことの無い口論になったりしていた。

例えば、シンプルなものであれば、お金や物を貸せと言われても持ってないと言い張れとか、親しくない人に住んでる場所を聞かれても違う場所を言えとか、好きじゃない人に連絡先を聞かれたらわざと電話番号を一桁間違えて言うのだ、とか。

そんなリハも無しで咄嗟に嘘をつくのはなかなかに難しい。

もっと複雑な嘘なんて絶対に無理だ。

記憶力も大してよくないので、やたらに嘘をついてしまったら最後、次に会った時に誰にどんな嘘をついたか思い出せなくなって嫌な汗をかくことになるに違いない。

別に「ワタシ、ウソ、ツカナイ。」という古き良きインディアンの掟に従っているとかではない。

日本の常人のレベルで(だと思う)嘘をついたりする時もままある。

しょーもないホラにおいては常人の数百倍は吹いてきた人生だ。

そのくせ、場合によって非常に柔軟性に欠け、適当なことを言って流せばいい場面なのに自分でも、

『あれ?実は私は生まれた村のしきたりか何かで二十歳まで女だということを伏せ男として、武士として育てられたんだったけかな?』

と思うくらい、時に自分に不利でもうまく嘘がつけない、真面目といえば聞こえはいいが、変なとこ頑なで融通が利かないというなかなかやっかいなタイプなのだ。(繰り返し言うが、ホラは超吹く。)

また、日系人の友人の会社の改装工事が進まないのでお金を渡して早くやってもらった、などの話を聞いて驚いて「それって何かずるくね?」なんてコメントを思わずした際に言われたことには、

「あのね!こっちがちゃんと賃金を払ってても普通の業者でもワイロ目当てにわざと工事を止めたりってこともあるの!それで何もしないでただ待ってたって、この国では工事してくれないまま2年3年なんてすぐ経っちゃうんだよ?!その間私たちはろくに仕事もできず、他の場所の借り賃だってバカにならないし社員に給料も払えない。借金だらけですぐ生活もできなくなるよ?馬鹿正直にやったってこっちでは本当にバカをみるだけで、何も進んでいかないの。文句を言うだけで何も手を打たないほうこそがここではバカなの。あなたはわりといつも自分のやり方を押し通そうとして怒って失敗してブラジル人はずるいとか悪く言ったりするけど、ここはそういう国なんだってば!そういうのもこっちのやり方なの。あなたはブラジルに長く住んでるんだからあなたの常識や日本のやり方とは違うってことをもういい加減ちゃんと学ばなきゃ!」

 と、ブラジル人の友人から見ると私はやはりそういうところがある、みたいなのであった。

私や仲間との間ではとても誠実でお人よしすぎるくらいであるその友人ではあるが、他人に対しては使うべき時には物事を潤滑にいかすためにうまく調子を合わせ、さらっと嘘をついたりすることもあり、そんな時は本当に見事なトラブル回避の手腕を見せつけ感心させられていた。

他にも何人か信用できるブラジル人の友人もいるが、やっぱりナチュラルに事実を捻じ曲げたことを言ったりすることもあり、だがそれゆえ駆け引きがうまくいったりしているのを何度も見てきた。

明らかに向こうが悪いという時もあったと思うし、自分なりに正しいと思っている部分もあるので反論したいとこだが、こっちに長く住むならば理解しないとあなたが無駄な苦労をするだけだ、という彼女の言い分にぐうの音も出ないのも事実なのであった。

そういった耳の痛い助言や数々の苦いブラジルでの経験からも、自分の今のやり方ではストレスが溜まる一方であるのは明らかだったし、しぶしぶではあるがある程度はブラジルではブラジルのやり方というものを学習しなければ、というタイミングではあった。

 

それなので、レオには、

日本に行ったためもう貯金が底をついた、不景気で生徒が集まらず瀕死寸前で、おまえが香水代を払ってくれないので食べるものも食べられずもうペコペコのガリガリだ、みたいないろんなことを言って、さらにこの家もあなたのことも大好きなので出て行きたく無いのはやまやまなのだがと心にも無い事を言い(レオ以外の家については本当に気に入ってはいたのだが)もうお金が払えないのでこのアパートを引き払わないといけない状況だ、とりあえず今月の家賃は入居時に払った前金で相殺にして欲しい、と頼んだ。

頼んだ、というか正規の手段で返金を待っていたら絶対に返って来ないだろうことは明白だったので、ダメと言われても強硬手段で入金しなかければ良いだけの話ではあった。

私にまで出ていかれてはさらに困ると焦ったレオは「今月はそれでいいけど、もっと住んでいていいんだよ?年末は給料が2カ月分出るからそれでガス代や管理費も払えるし、君が住みやすくなるように必ず良くしてあげるから!」

すぐに環境を整えてあげるから!と調子の良い事をここ半年の間に毎月のように言われていたために酸っぱい気持ちでいっぱいになったが顔には出さず、

「わかった!私もあなた(の家)が気に入ってるし、たくさん働いてなんとか住み続けられるようにがんばるからね!!」

とかなんとか適当に言って乗り切ってみた。

思ってもいない事を言うのは非常に心地悪いが相手が相手だ、いたしかたあるまい。

こういうやり方をしなければ搾取され続けたか激しく揉めただろうことは想像に難くない。

歯には埴輪。

 

さて、とうとう尻に火がついた。

なんとしてもこの1カ月のうちに移り住む家を探さなければ。

だが、ネットで毎日探して動いてみるも条件に合う家はやはり見つからない。

そうこうしているうちに2017年も残すところあと1週間を切ってしまった。

 

  …もうちょっと続くよ。

 

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ゴミ箱に捨てられていたマルちゃん正麺の袋。実は2回食べられている…憎い。